老後を考えた家づくり

2月 25th, 2013

  50代に入ってから建てる家は、高齢になった時のことをいろいろと考えて建てる必要があります。

 両親が実際に建てた家でお話することにしましょう。三重注文住宅を建てたのは2年前のことです。それまでは賃貸マンションで暮らしていました。3階建ての最上階に住んでいましたが、年々階段での上り下りが苦痛に感じるようになっていました。他の賃貸に引っ越すことも考慮しましたが、思い切って終の棲家となるマイホームを建てようかということになったのです。

 地元にある工務店に建設をお願いをしました。シルバー世代になっても不自由なく暮らせるように設計して欲しいと依頼しました。設計に至るまでの間、両親はカウンセリングを受けました。両親の暮らし方や、癖、また身長や身体の作りに合わせて設計する必要があるからだそうです。そこまで考えて設計は進められていくものなのですね。この時初めてそのことを知りました。

 将来、介助用の手すりがつけられるように、手すりが必要となりそうな箇所には壁の補強がされています。ネジ止めが緩んだり外れたりしないためです。床はすべて段差のない作りにするのは最近ではめずらしいことではありませんね。それに加えて室内のドアはすべて引き戸にしてあります。それからトイレと洗面は隣あっています。その間の壁にも引き戸があります。現在はトイレ側から鍵をかけ閉めきっていますが、将来どちらかが介護される側になった時に、この部分の出入り口はたいへん重要になってくるはずです。

 キッチンは母の身長に合わせた作りです。階段の手すりもどちらかに負担とならないように配慮され、入念に高さをチェックしながら取り付けてくれました。

 誰でもいずれは年を取り、身体の自由がままならなくなってくるものです。そうなってからあれこれと対策をするには、今感じる以上の労力が伴うことが予想されます。それならば、少しでも若いうちにシルバー世代に備える準備をしておいたほうが安心なのではないかというのが、両親の考えでした。

プライベートルーム

12月 11th, 2012

 子ども達のプライベートルームは、いわゆる子ども部屋で、勉強をし、遊び、眠るところです。では、大人にとって、プライベートルームと言うのは、どんな部屋でしょうか。自分を取り戻す空間と言えるのかもしれません。それぞれの個性によって、その部屋の様子は変わってきます。

例えば、我が家の場合、主人のプライベート空間はロフトです。二畳程度のフローリングの空間です。工務店さんに作りつけてもらった机とラックがあります。そこに、乗り物の模型が置いてあります。時間を見つけて、少しずつ作ってきたものです。主人は、この狭い空間で、模型を作るとき、子どものような目をしています。私は、キッチンの隣の二畳程度のスペースです。そこにも、やはり、机を作りつけてもらいました。私は、ここに、ノートパソコンをおいて、家事の合間に、全国の仲間たちとメールをします。転勤族だった私が各地で孤独にならなかったのは、パッチワークのお陰でした。ちょうどパッチワークが流行した時期でもありました。引っ越しした先で、パッチワークを通じて、すぐ友達ができ、離れ離れになった今でも、メールで作品を見せ合いしています。

 家族みんなで暮らす家ですから、皆が集い、くつろぐリビングダイニングは大切な空間です。それと同じくらい、一日にわずかな時間であっても、自分自身と向き合う時間が重要です。大人の数だけ、色々なプライベートルームが存在します。自分の好きな本を読む書斎であったり、釣りの道具を手入れする部屋であったりします。独立した部屋が無理な場合は、寝室に間仕切りしたコーナーを作ってもいいし、リビングの一角でもかまいません。住まいに大人たちが夢見る空間を作ってみましょう。

ユニバーサルデザインの町づくり

11月 9th, 2012

 最近は、住まいだけでなく、街全体をユニバーサルデザインして、誰もが暮らし易い空間を考えていくようになりました。もちろん、これは、個人レベルでなく、地方自治体レベルでの取り組みですが、道路の段差をなくしたり、連絡通路にスロープを設けたりしています。ある町では、幼稚園や保育園と高齢者のディサービスやショートスティの施設などを隣接させ、その周囲に集合住宅や戸建て住宅を建てて、相互が助け合いながら、生活をしていくような町づくりを推進しています。

 1つの住まいを建てる時、そこには家族が住みます。家族には、二世代、もしくは三世代が生活します。幼い子たちや高齢者に対しては手助けをし、安全で快適に暮らしていけるようにします。また、建物を建てる時点で、工務店さんと考えて、ユニバーサルデザイン

を取り入れていきます。生活するのに大変だったことが改善されたり、ひやひやしながらしていたことが安全になったりします。そういう安全性や快適性が玄関から戸外のアプローチに広がり、道路や橋や駅など街全体に広がっていきます。商店一つ一つにスロープをつけたり、飲食店のトイレなどにユニバーサルデザインのものを採用したりする助成もあります。低床バスや電車を採用したり、道路の段差をなくしたりもしています。ハード面だけでなく、ソフト面でも、乗り合いタクシーを携帯電話で予約するシステムや助けを必要な人が援助できるボランティアに繋ぐシステムも構築されています。

 誰もが安全で快適に暮らせる街というのは、自分が高齢になったり、障害を持ったりしたときでも、自立して、社会生活をしていく可能性が大きく広がっていきます。誰かのためにではなく、いつか、自分がその立場になった時に自分を助けることになります。そんな町こそ、終の棲家を建てるにふさわしいと思います。そんな取り組みが全国各地で模索されています。

ユニバーサルデザイン―トイレ 

10月 7th, 2012

 高齢者や障害者が普通の生活ができるように生活に取り入れられた考え方がバリアフリーですが、トイレに入るのに段差をなくしたり、手摺をつけたり、引き戸にしたりして、トイレをしやすいように工夫します。

我が家の場合、大便器と小便器を設置しましたが、もし、誰かが車椅子が必要になったときは、大便器と小便器の間に設けている壁を簡単に取り除くことができます。トイレの広さが二倍になり、車椅子で使用するのに、十分な広さが確保されます。

この住まいを建てた時、父は58才で、母は53才でした。まだまだ働き盛りでしたから、高齢になるとか、介護が必要になるとか、そんなことは現実感ありませんでした。あれから25年です。まだ、介護は必要ありませんが、自分でトイレに行く時、バリアフリーのトイレはすごく便利です。

介護というのが現実感なかった25年前、正直、将来のことを考えて可変性のある仕切り壁を設置してくれた工務店さんの話をあまり真剣に聞いていませんでした。当時、流行り始めていたバリアフリーのトイレを作ったぐらいにしか思っていませんでした。それが必要で、便利だと自覚するほどではありませんでした。その良さが分かってきたのは、住み始めてからでした。足をねんざした時や妊娠した時でした。ちょっとした段差がこんなに大変だとは思いませんでした。高齢だから、バリアフリーが必要なのではありませんでした。

先日、母親が腰を痛めたので、トイレに付き添った時、工務店さんの先見の明を実感しました。介助するのに壁が邪魔で、肘などを打ってしまいましたから、やはり、本格的に介護が必要になったら、壁を取り外そうと思います。それに、もっと便利になったユニバーサルデザインの便器が売り出されています。また、工務店さんに相談しようと思っています。