浴室の安全性

11月 13th, 2021

 浴室は、滑って転んだり、浴槽で溺れるなどの事故が多い場所です。それだけに家庭の中でも最も危険な場所の一つなのです。そこでしっかりと安全面を確保して、安心して入浴できるようにしておきましょう。
まずは、滑りにくく、衝撃を吸収してくれる床にします。つるつるとしたタイルの床は滑りやすく、転ぶと大きなケガをすることがあります。最近の浴室の床は表面の凹凸を細かくすることで、濡れていても足が床面をピタッととらえ、滑りにくい形状になっているのです。万が一転んでも衝撃を吸収してくれるクッション性を持たせたものや、膝を直接ついても痛くない柔らかい感触の床になっているのです。次は、浴槽のまたぎやすさです。以前に多かった和式の浴槽は高さがあるだけでなく、床に置くタイプであるため、入浴する時に足を高く上げてまたがなければなりませんでした。小さい子ども、足腰の弱い人はとても入りにくいのです。最近は浅型の形状の浴槽が増え、半埋め込み式が主流となったことで、浴槽のへりのまたぎ部分の高さが低くなり、浴槽への出入りがスムーズに行えるのです。
浴槽のまたぎ部分の高さは低すぎても入りにくく、床から40㎝前後が適切な高さと言われています。この高さは、いったん浴槽に腰かけてから入浴動作に移れる高さであり、足腰の弱い人や小さな子どもでもスムーズで安心に入浴することができるのです。
そして最後に、入浴動作を考え、転びやすい姿勢になる時に、身体を支えられるように手すりを設置しておきます。このようにしっかりと浴室の安全面を確保して、快適なバスタイムを送れるようにしておきましょう。

福祉から見た住まい

8月 24th, 2012

 先日、私が住む町で、1つの心温まる会が発足しました。

それは、福祉から見た住まいを考える集まりです。介護保険が施行されてから早いもので11年、介護保険を利用して、高齢者や障害者が在宅で自立した生活を可能にしたり、介護しやすい環境を整えたりするために、リフォームするケースが増えています。

しかし、個人によって障害の程度はさまざまですし、男性、女性、身長などの体形も違います。また、もともとある住まいのリフォームですから、さまざまなケースがあります。そこで、色々な専門家が連携していくことが大切ですが、なかなかその連携する場がありません。医療関係、福祉関係、建築関係の専門家が専門知識を出して、勉強会をしていくのだそうです。今まで、あるようでなかった勉強会です。

 例えば、単に手摺をつけると言っても、その人の身長によって設置する高さも違います。また、手摺の太さもその人によって、違います。その人の障害の部位や程度によって、手摺の設置場所も違います。手摺をつけることは簡単なことですが、その人のニーズに合った手摺をつけるということになると、とても難しいことです。まして、住まい全体を障害の程度に合わせて、リフォームしていくということは、そんなに簡単なことではありません。しかも、リフォームを担当するのは、医療や福祉の専門知識のない健常者の建築関係の専門家です。それぞれの知識が孤立した状態で、活かされていないのが現状です。

それらの専門家間の橋渡しをし、知識を補い、アドバイスしてくれたとしたら、個々のケースに即した対応ができます。これから医療の発達とともに、ますます在宅医療が推進されていきます。

在宅医療において、最重要課題は、環境を整えることです。在宅医療を支える医療環境、福祉環境だけでなく、住環境を整えることは不可欠になっていきます。それらの知識と経験豊富な工務店のニーズが増えてくることでしょう。

息子と住む住まい

7月 13th, 2012

 私の友人の息子さんは在宅で闘病生活を続けています。

以前は、入院していましたが、4年前に在宅医療専門のクリニックを開業された先生を紹介していただき、在宅に切り替えたそうです。そのため、住まいをリフォームしました。今は、専用の車椅子で移動することもできますし、パソコンを使って、色々な人とのコミュニケーションもできるので、彼の生活の場を1階に設け、できるだけ壁をなくして、車椅子で自由に移動ができるように、段差をなくし、玄関から外出しやすいように、緩やかなスロープもつけました。

彼の部屋には、現在だけでなく、将来、必要な医療機器などが丸ごと収納できるように、作りつけの棚を設置しましたから、車椅子の移動にも支障がありません。

 在宅で闘病するということは、意識が闘病だけに向かわず、普段通りの家族との生活が続けられることで、心が癒されるというメリットがあります。反面、普通は、健常者が住むことを想定した住まいなので、闘病には不便であり、不安でもあります。そこで、介助しやすいように、専門家の助言を得て、住まいをリフォームしようと思ったそうです。頼んだ工務店さんは、福祉住環境コーディネーターの資格を持っていて、高齢者や障害者などが住みやすい環境を提案してくれましたし、実際に多くの施工事例を経験していました。それでも、彼女の息子さんのように、進行性の難病を持っている患者さんの在宅医療をしていく部屋ということで、想定外のことも多かったようです。

そこで、主治医や担当看護師にも会って、医学的な助言もしてもらい、病院も見学させてもらうなど、工務店さんなりに勉強もされたようです。住まいに必要とするものは、個々の家庭の事情によって違います。それを細かく聞いて、実現してくれるのが、このような仕事熱心な工務店さんです。